人手不足時代だからこそ、改めて考えたい「自店舗のコンセプト」
飲食業界では、人手不足や人件費の上昇が大きな課題になっています。
「求人を出してもなかなか応募が来ない」
「以前と同じ人数を確保するのが難しくなった」
そんな声も珍しくありません。もちろん採用方法を見直すことも必要です。
しかし、人を採用することだけで解決しようとするのではなく、そもそも今の店舗運営に本当にその人数が必要なのかを、一度考えてみてもよいのではないでしょうか。
そのヒントのひとつが、「サービス方式」の見直しです。
1.セルフサービスは、すでに特別なものではない
最近の人気大手カフェなどでは、カウンターで注文・会計を行い、自分で商品を受け取るスタイルが定着しています。
中には、スマートフォンから注文・決済し、レジに並ばず商品を受け取れるモバイルオーダーも提供されているところもあります。
こうした仕組みは、単なる人件費削減のためだけではありません。
お客様にとっても、
「レジに並ばなくていい」
「自分のタイミングで注文できる」
「短時間で利用できる」
といったメリットがあります。
以前であれば「サービスを簡略化している」と受け取られることもあったセルフサービスですが、現在では私たちの生活の中にかなり浸透してきました。
2.セルフが増えてきた中でのフルサービスの価値
すべてのカフェ・喫茶店がセルフサービスになればよいわけではありません。
席について注文し、商品を運んでもらい、店内でゆっくり過ごすスタイルにも明確な価値があります。
スタッフとのやり取りや、席を立たずに注文できること…これもサービスの一部です。
特に、
ゆっくり過ごしてもらいたい
シニア層やファミリー利用が多い
接客を含めて店舗の価値を作りたい
比較的高い客単価を設定したい
といった店舗では、人によるサービスが重要になるでしょう。
つまり、セルフサービスとフルサービスのどちらが優れているかという話ではありません。
重要なのは、自店舗にどちらが合っているかです。
3.立地や客層によって「サービスの向き不向き」は変わる
例えば駅前で、通勤途中や仕事の合間に短時間利用するお客様が多い店舗なら、注文から受取までスピーディーなセルフサービスとの相性はよいでしょう。
一方、住宅街で地域のお客様がゆっくり過ごすことを目的として来店する店舗なら、フルサービスの価値がより高まります。
考えてみたいのは、
どんなお客様が多いのか
何のために来店しているのか
平均滞在時間はどれくらいか
客単価はいくらなのか
回転率を重視するのか
接客そのものに価値があるのか
という点です。
ここまで考えると、サービス方式は単なるオペレーションの問題ではなく、店舗コンセプトそのものと深く関係していることが分かります。
4.「全部セルフ」「全部フルサービス」の二択ではない
もうひとつ考えておきたいのが、サービス方式を二択で考える必要はないということです。
最近では、フルサービス型の飲食店でも一部の工程だけをセルフ化するケースが増えています。
例えば、
QRコードからお客様自身で注文する
会計だけセルフレジにする
水やカトラリーをセルフにする
食器を返却口へ持ってきてもらう
注文と会計はセルフ、配膳はスタッフが行う
モバイルオーダーを併用する
といった方法です。
例えば、着席後の注文だけをセルフ化し、料理の配膳はスタッフが行う方法もあります。
このように、一つの店舗の中でも「人が行うサービス」と「セルフにするサービス」を分けることができます。
すべてをセルフ化する必要はありません。
むしろ大切なのは、
「どこをセルフにするか」ではなく、「どこに人によるサービスを残すか」
という考え方ではないでしょうか。
5.改めて、自店舗のコンセプトを考えてみる
人手不足だからといって、すぐにサービスを削ればよいわけではありません。
例えば、お客様との会話や細かな気配りが支持されている店が、そこまでセルフ化してしまえば、その店らしさを失う可能性があります。
反対に、短時間利用のお客様が中心なのに、すべての工程をスタッフが行っているなら、本当に必要なサービスなのか見直す余地があります。
そこで改めて考えたいのが、
「自分たちは、どんな店でありたいのか」
という店舗コンセプトです。
誰に来てもらいたいのか。
どんな時間を過ごしてもらいたいのか。
商品、空間、接客のうち、どこに自店舗ならではの価値があるのか。
そして、その価値を提供するために、人にしかできない仕事は何なのか。
ここが整理できれば、逆に「人がやらなくてもよい仕事」も見えてきます。
6.人手不足時代は、採用だけでなく「仕事そのもの」を見直す
人が足りなくなったとき、
「求人を出そう」
「時給を上げよう」
と考えることは当然です。
しかしこれからの人手不足時代では、
必要な人数を採用することと同時に、必要な人数そのものを見直すこと
この両方を考えることが、より重要になってくるのではないでしょうか。
注文方法、会計、配膳、下膳だけではありません。
メニュー数、仕込み作業、営業時間、発注方法など、店舗運営にはまだ見直せる部分があります。
自店舗のコンセプトを明確にしたうえで、
「人が行うことで価値が生まれる仕事」
「仕組みに任せても価値を損なわない仕事」を分けて考える。
人手不足をきっかけに、改めてそんな視点から自店舗の運営を見直してみるのも、一つの方法ではないでしょうか。

